最初に基礎知識として、江東区の保育園の利用調整の仕組みを説明します。
江東区では指数と優先順位が高い世帯から優先的に保育園に入ることができます。「入園したい園の希望順位」は関係がないので注意してください(希望順位の意味については後述)。
大多数の世帯では調整指数による影響はないので、基準指数でほぼ決まると考えて問題ありません。第一子の場合には、両親ともにフルタイム勤務で24点が最高になると思います。そして豊洲の保育園の当落ボーダーは殆ど24点なので、豊洲での最初の保活は受かることを祈りながら第1希望から第5希望までしっかり書くことが通常になると思います。
24点で同点の場合には優先順位の適用によって当落が決まりますが、これも大多数の世帯では「世帯年収」によって決まります。入園のしおりでは「経済的困窮度の高い世帯(前年度の市区町村民税で判定します。)」となっています。サラリーマン家庭では住宅ローン控除ぐらいしか影響を与える要素はありません。
利用調整に用いられない「入園したい園の希望順位」は、上記の利用調整によって複数の保育園のボーダーを超えた場合に初めて利用されます。例えば、25点の世帯であれば第1希望から第5希望の全ての保育園のボーダーを超えるので、間違いなく第1希望に決まります。
25点以上の世帯の第1希望が決まった後に、24点の世帯のうち世帯年収が1番低い世帯の園が決まり、24点のうち世帯年収が2番目に低い世帯の園が決まり…、と繰り返していくうちに人気の園の定員が埋まってしまいます。24点のうちn番目に世帯年収が低い世帯について、人気の園の定員が埋まって第2希望の園と第5希望の園だけが枠が空いているといった場合には第2希望の園に決まります。
よって、「入園したい園の希望順位」は、純粋に希望する順位で第1希望から第5希望まで記入することが最適解です。絶対に全落ちを避けたいのであれば、競争が激しくない園を滑り止めで第5希望に記入しておくのもありです。
ボーダーが24点で横並びの保育園について、人気・不人気を調べる際に参考になるのが申込倍率です。江東区のウェブサイトでは、各園のボーダーと併せて4月入園一次募集での申込倍率を過去3年分公開しています。以下に令和5年度の申込倍率の一例を抜粋いたしました。
これだけを見るとあまりの倍率の高さに驚くと思いますが、この倍率は第1希望から第5希望までの全ての申込の合計倍率になります。下の表でアスク豊洲~ゆらりん豊四を第1希望~第5希望として申込が行われると各園の申込者が1名ずつ増えますが、実際に入園するのはそのうちの一つ(もしくは全落ち)になるので、単純計算で実際の倍率の5倍になってしまうと言えます。
令和5年度の例では、ミアヘルサ保育園ひびき豊洲の0歳児の申込倍率は4.33倍でしたが実際には定員割れでした。つまり点数に関わらず申込していれば全入(他に希望順位が高い園が無ければ)だったのです。
一方、前年度の令和4年ではミアヘルサ保育園ひびき豊洲の0歳児の申込倍率は8.25倍で、ボーダー24点で落ちる人もいました。前年度の状況から申込倍率が高いミアヘルサ保育園ひびき豊洲への申込を避けた結果、全落ちになってしまった世帯があるかと思うとやるせない気持ちになります。
さらに申込倍率には24点より指数が低い世帯も含まれていることが、実際の競争の激しさを予測する困難さを増す要因になっています。令和5年度の例ではアスク豊洲のボーダーラインは24点で優先順位表に【優】の表記があるので、24点でも落ちた人がいることは確実です。
しかしながら定員6名の枠に、24点の申込者が7名いて23点以下の申込者が28名いた場合の申込倍率5.83倍と、25点以上の申込者が5名いて24点の申込者が30名いた場合の申込倍率5.83倍とは、数値上は同じ5.83倍と表示されますが実際の競争の激しさは全く異なります。
前者は24点の7名の申込者のうち世帯年収が最も高い1名のみが落ちたのに対し、後者は24点の30名の申込者のうち世帯年収が最も低い1名のみが入園できる状況です。
上述のように倍率では園の実際の競争率がわからないので、区の条例に則って開示請求を行いました。
請求の要旨は「豊洲の保育園の0歳児クラスについて、25点以上で入園した人、24点で入園した人、及び24点で落ちた人の人数」です。これらの人数がわかれば園の実際の競争率がわかると考えました。
実際に黒塗りになった資料を見せていただくと、他に希望順位が高い園に決まる例が多くもう少し複雑な内容でした。例えば、5名の枠に対して20名が申込していても、他の希望順位が高い園に決まって落ちた人はいないという場合もありました。
令和5年度の例について、申込倍率と実際の競争率との間に大きな差がある二つの園について以下に紹介いたします。
表の見方について「申込」に記載されているのは、表の左の点数で申込を行った人数です。「入園」に記載されているのは、表の左の点数で入園した人数です。第1希望から第5希望まで記入する都合、他の希望順位が高い園に決まる例が多いことに注意してください
「落ち」に記載されているのは、24点で最後に入園が決まった人より優先順位が低い人(≒落ちた人)の人数です。実際の競争率は、24点で落ちた人数と24点で申込を行った人数との比によって決まります。
具体例を挙げて説明しましょう。TKチルドレンファーム豊洲校と蓮美幼児学園とよすナーサリーに関して、TKチルドレンファーム豊洲校の申込倍率が8.33倍、蓮美幼児学園とよすナーサリーの倍率が3.67倍のため、一見するとTKチルドレンファーム豊洲校のほうが競争率が高そうに思えます。
しかしながら、TKチルドレンファーム豊洲校の24点での落ちと申込との比は8/40に対して、蓮美幼児学園とよすナーサリーの24点での落ちと申込との比は8/33です。優先順位が世帯年収で決まることを考えると、TKチルドレンファーム豊洲校では40名のうち世帯年収が高い上位8名が落ちたのに対して、蓮美幼児学園とよすナーサリーでは33名のうち世帯年収が高い上位8名が落ちています。
つまり、申込倍率に反して蓮美幼児学園とよすナーサリーの方が競争率が高いと言えるので。第1希望を蓮美幼児学園とよすナーサリー、第2希望をTKチルドレンファーム豊洲校とした場合に、第1希望に落ちて競争率が高い第2希望に決まるということは普通にあり得ます。
推測ですが、TKチルドレンファーム豊洲校は第2希望以下に記載した人が多く、見た目の倍率が高くても実際の競争が倍率ほどに激しくならなかったのに対して、蓮美幼児学園とよすナーサリーは第1希望に記載した人が多く、見た目の倍率が低くても実際の競争が非常に厳しくなったと考えられます。